長文、文才はないですが、祖父に伝えたい。祖父との全てをここに残させて下さい。
私の祖父は自分勝手で内孫の私や弟よりも外孫を可愛がる人でした。
そのせいもあってか、私は物心が付いた頃から祖父と何かとぶつかり合い喧嘩ばかりで、私はよく「さっさと死ね」などヒドイ言葉を繰り返す事も度々あった。
しかし祖父も負けじと、「お前なんかより○○(外孫)のが可愛いわ」と言い返すくらい仲が悪かった。
内孫だから周囲の人は可愛がってもらってると言われ続け、その度に『何もせんでいい外孫の方がよっぽど可愛いがってもらってるやん。内孫は顔見せるダケでは喜んでももらえんのに、外孫だけには小遣いも物も買ってやるくせに。内孫なんて損なだけ』と思っていた。
仲が悪いまま、時間は過ぎました。
私が19歳の秋、仕事が休みだったある日、祖母が慌てて「おじーが倒れたって電話があった」と。たまたま知り合いの人が祖父に気づき、怪我もなく意識もはっきりしていたので家に電話をくれた。迎えに行くと少し左に傾くのを見て、病院にそのまま連れて行こうとすると、祖父は病院には行かないと言い出す。喧嘩をしながら病院に連れて行った。
祖父は糖尿病からの合併症で脳梗塞を引き起こしたのです。
それから祖父は入院をしましたがすぐに退院をし、自宅に戻って来てからは動く事もめんどくさがり、止められたお酒を飲んでは便を漏らし、その処理を祖母や母、私にさせていたのです。それでもオムツを嫌がり、正直そんな祖父を本気で居なくなればいいと思っていました。彼氏を家に連れて来ても漏らしているのを見られて恥ずかしい思いをたくさんして、ますます祖父と話す事もなくなり顔を見ても無視をするようになりました。
日に日に弱々しくなって行く祖父。
本当は、漏らしたくて漏らしているじゃない事も、申し訳なく思っている事もわかっていました。そんな祖父を怒鳴ってしまった事に後悔し、泣きながら祖父の便を処理するため床を拭いた時もあった。
祖父は糖尿病がひどくなり、入院をすることになりました。離れて暮らすのに少し寂しさも感じ前より祖父に私は優しくなれるようになりました。成人式の日、振り袖を来て祖父に会いに行った日の事です。祖父は私に早く帰れと怒鳴りつけるのです。
祖父の目にはこぼれそうなほど涙をたくさん溜めていました。
そんな祖父を初めて見たせいか何も言えず、ただ黙って部屋を後にしました。
祖父の声を殺した鳴き声とすすり泣く音を聞きながら黙って帰ってくる事しか出来なかった。
月日は経ち、私も23歳になり結婚が決まりました。
祖父は、退院をしていたのですが、体調は決して良い状態ではありませんでした。しかし、結婚式には出席してくれて、文句を言いつつ喜んでくれているようでした。結婚式と言う事もあってか並べられた料理を残さず食べ、大好きなお酒まで飲んでしまい、終始ご機嫌でした。
言葉を交わす事もなく、ただ心配をしながら祖父を見ていた。嬉しそうな祖父を見て私も本当に嬉しかった。
結婚式に祖父と何年ぶりかに写真を撮りました。
新婚旅行から帰ると祖父は体調をくずし、また入院をしたのです。
それから祖父が家に帰ることは難しくなり、祖父は様態が悪くなる一方でした。何度か危険な状態もあったのですが様態は持ち直し、少し安心していたのです。
新居から病院が遠い事もあって週に1度行くのがやっとでした。仕事を始め、忙しくなり週に1度行く事どころか月に1度行くのがやっとになっていました。祖父が再入院してから、1年半が過ぎた頃、父が手術をする事になり、祖父のお見舞に2ヶ月も行く事が出来ませんでした。
父の病院の帰りにでも寄る事は出来たのですが、看病や仕事の疲れもあって、『いつでも行けるし、今度の休みでいいか』と寄る事をしませんでした。
次の日曜に久しぶりに行こう。そう思って居た時、夜中に突然母から電話、その瞬間なんとなく予想は出来た。
「さっきオジーサンが急変して亡くなった」と。
自分でも驚くほど冷静で、礼服と着替えを鞄に詰めて用意をし、実家に向かった。
車の中で考えるのは後悔ばかりだった。
もっと会いに行けばよかった。もっと優しくすればよかった。あの時何で後回しになんかしたんやろ。
悔しくて、寂しくて、泣けてしょうがなかった。
祖父は眠るように息を引き取ったそうです。
祖父が自宅に帰って来ました。「おかえり」と祖父に話しかけても、もう「ただいま」も起きて喧嘩をする事もない。
布団に横になる祖父を見つめながら弟が「お見舞いに全然行ってやれんかった」そう声を詰まらせ、それ以上何も言わなかった。内孫だったが為に私も弟も祖父を大切に出来なかった。
寝ているような祖父を見つめながら思い出すのは、小さい頃祖父と過ごした日の事ばかり。可愛がってもらえなかった、何もしてもらえなかったのではなく、ただ私が忘れていただけでした。
祖父の横に寝転がり色んな事を思い出した。
花火大会やお祭りに連れて行ってもらった事、保育園のお迎え、おやつを作ってくれてた事。
こうやって一緒に眠った事やおんぶしてもらっていた事。大切な思い出を今まで忘れていた。
あんなに居なくなればいいと思っていたのに、こんなに大切だったと気づいたのはもう祖父に会う事が出来なくなってからでした。
泣いてばかりで、ちゃんとお見送り出来なかった。
たった1人の祖父なのに大切に出来なかった。
こんな私に祖父が残してくれたのはたくさんの思い出とたくさんの愛でした。
祖父と撮った最後の写真にはウェディングドレスの笑顔の私と、泣き出しそうな祖父、家族に囲まれて写っている幸せな写真。
祖父が私を呼ぶ声。
のーちゃん
のーちゃん
また呼んでもらえると思ってたのに…。
成人式の日、喜んでくれてた事なんてずっと知らんかった。
オジー…
何もしてあげられんくてごめんな…。
最後まで言えんかったけど、オジーの孫で本間によかった…。
オジーありがとう…。
会いたい…。
オジーに会いたいよ…。
オジー
オジー
今度もまたアタシのオジーになってな。
また喧嘩するやろうけど、嫌かもしれんけど、それでもまたオジーの孫がいい。
オジーありがとう。本間に大好きやで…。
こんな孫で本間にごめん。ありがとう…
オジーありがとう…
忘れていた思い出
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